マトゥラ(3)

朝6時頃目が覚めて、
2度寝してすやすやしていた頃、
お堂でお祈りが始まった音が聞こえてきた。
宿坊はどういう構造なのか、
クーラーも付いていないのに
ファンだけで十分涼しくて快適。
ようやく起き上がって水浴をし、
服を着替えて荷物をまとめてお堂へ入った。

熱心に拝む女性参拝客が2人、
あとはバジャンという賛歌を歌いながら
楽器を鳴らす人と
ぽつぽつ巡礼客のようなのが座ったり、
立って拝んだりしていた。
遠慮がちに遠巻きに眺めていると、
ここのアシュラムの人か、
1人の人に前まで来て拝むよう勧められたので
言われるままに歩いて行った。


その後、ID無しで泊まることができたこと、
それからこの宿坊を私に提案してくれたリクシャこぎに
対する感謝の気持ちを胸に、宿帳にチェックアウトの
サインをして宿を出た。


宿の前の道の大通りでは
朝の通学中の子供たちや、これから仕事に出るらしい
おっさんらが行き交っていた。
私は昨日行ったクリシュナの生誕地に歩いて向い、
その敷地の正面の通りを歩き切ると
そこには大きな四角形のガート(沐浴場)があった。
でも期間限定で開かれるらしく、
周りは柵で囲まれて鍵がかけられていた。


そのまま歩いて、先ほど歩いてきた道まで出て、
そこでテンプーを拾って
隣町のウリンダーヴァンに向かった。
ウリンダーヴァンもまた巡礼町のひとつで
小さなマトゥラの町よりさらに小さな
ひっそりとした町で、その中に
ヒンドゥー寺院が大小合わせて数百あるという
宗教色の非常に濃い町。
乗ったテンプーのドライバーが、
途中でガイド役のために知人を拾った。
それで、
頼みもしないのにそのガイド役の案内で
彼による選り抜きの寺院を周った。
古い寺院ばかりかと思いきや、
以外と近年インドの財閥の援助で建ったような
新しい味わいに欠く寺院もあった。


クリシュナといえば、
クリシュナ神の熱烈信仰のために有名となった女性が
伝説になっていて、彼女の名をミーラという。
ミーラは熱烈信仰のために発狂してしまい、
そのような者がいるのは一族の恥として
一族の王に毒を盛られるんだけど、
ミーラはそれを笑いながら飲み干してしまう。
でもクリシュナへの信仰心のパワーか、
ミーラは死ななかったんだそう。


その、ミーラのような女性信仰者ばかりのお寺も
途中にあったのが印象的だった。


またマトゥラに戻り、ほんとは
カニシカ王仏教美術で有名な
マトゥラの博物館に行きたかったんだけど、
あいにく月曜は休館日だった。また来よう。
とぼとぼ街の大通りらしきを歩き、
昨日通った“聖なる門”と呼ばれる大きなゲートを
また見に行き、バス停に行ってデリー行きの
バスを探すと、目当てのバスはすぐに見つかった。


マトゥラはガイドブックには載っているけど
とっても小さな町でまだ観光客ズレしていなくて
皆がクリシュナ神の加護の下で日々の生活を営んでいるような
温かみのある素朴な聖地だった。