マトゥラ(2)

着いたバススタンドから、デリー南東部に位置する
南方面行きのバスが発着する別のバススタンドへ移動、
そこでいよいよマトゥラ行きのバスに乗り換えた。
バスの中ではほとんど眠っていた。
目が覚める度に窓の外を眺めたけど、
いつも青々とした背丈の低い雑草が生い茂っただけの辺鄙な大地だった。
そんな中を走り抜け、3時間後くらいに目的地のマトゥラに到着。
デリーからマトゥラまで84ルピー=約250円。


マトゥラのバススタンドに着くと、リクシャのこぎ手に囲まれ、
みんなが口々に、
どこに行きたいのか?ホテルか?ガートか?寺院か?と
行き先を知りたがる。久々の観光地気分。
そんな中を通り過ぎ、バススタンドから通りへ出ると、
前面部がガラス張りのちょっとこじゃれたインドスイーツショップが
あった。そういえば朝から何も食べてないので寄ってみることに。
内部にはインドならどこでも見られるようなメジャーな生菓子から
見たことのない美味しそうなものが、
ショーケースの中とその上部に何種類も並べられていた。品揃えが多い。
入って突き当たりのショーケースの前で女の子グループが
何か注文していた。
見るとバーダム・ミルクという
インドではメジャーなアーモンド入りミルクだった。
氷水の中でカップごと冷やされてて、いかにも美味しそう。
私も注文して早速飲むと…
美味しい!
今まで飲んだバーダム・ミルクの中でここの店のが一番美味しい。


それから、並べられた菓子類を一通り眺めて、
どうしても無視できない(これはゼッタイ私好みだなぁ!)という品があった。
ここで逃してはならないのはある種の鉄則。
早速量り売りのそのお菓子を6ルピー分だけもらった。
それはクレープ状に焼き上げたミルク菓子をまた甘いソースに
漬け込んだものだった。名前失念。
口に入れた途端、あーやっぱり美味しい。
いつかまたマトゥラに来たら、また食べたい味。


店を出てリキシャを拾い、ガイドブックに載っていた
ヤムナ川沿いに佇むというホテルに向かってもらった。
ヤムナ川はマトゥラの重要ポイントで、
これは下流に行くとやがてガンジス川
上流にさかのぼればヒマラヤへと続く神聖な川。


ヤムナ川へと続く道は、参道のようにとっても賑やかで
軽食屋やらクリシュナ神関連の小物類や
鮮やかな衣類の店や鍛冶屋などが
狭い通りを挟んで軒を連ねていた。
私を乗せたリクシャはその通りを時々牛とすれ違いながら
川へと向かって走った。


目的とするホテルで、やはりIDの提示を求められ、
所持してないので宿泊を断られた。そして、
ジャナム・ブーミーのインターナショナル・ゲストハウス
へ行くようアドバイスしてくれた。
ジャナム・ブーミーとは生誕地という意味で、
クリシュナ神の生誕地に寺院が建っていて、
その敷地内にゲストハウスがあった。
しかし、そこでも断られたので、
今晩は泊まらずに夕方のバスでグルガオンに帰ろうか
という気になってきた。


それでもせっかく来たのだからと思って、
ホテル探しに付き合ってくれてるリクシャのこぎ手に
アシュラムはないかと聞いてみた。
アシュラムというのはヒンドゥー教の修道場で
巡礼客が宿泊したりもでき、
ヒンドゥーの巡礼客でなくても、
ルールさえわきまえていれば私でも泊めてもらえる。
幸いにも物分りの大変良いリクシャのこぎ手で、
すぐに私の望む場所に連れてってくれ、
やっとどうにか泊まる場所を確保できた。
<ババ・シュリ・アシュラム>というところで
入り口に大きな象の置物が2体配置されていた。


その大きな建物は入るとしんと静まり返り、ひんやりと
していた。
入って左側が古めかしいお堂で
土着の神様が祀られていた。
入って右側がゲストルームで、
2階建ての建物が広場を囲む形で建っていた。
シャワーを浴びて一休みし、
夕刻になって外出。
この小さな巡礼地のメインスポット、
クリシュナ・ジャナム・ブーミ。



ここはクリシュナが生まれたという場所で
小高い丘に堂々とした寺院が建っていて、
参拝客がぞろぞろと入場口から入っていた。
入場料は取られないが、
デジカメ、携帯電話を入り口付近で1アイテム1ルピーで
預けなくてはいけない&厳しいボディチェック。
インドではテロ防止対策として
空港や鉄道駅はもちろん、大型スーパーや
宗教建造物に入るときもセキュリティーチェックがあって、
ただゲートをくぐるだけのときもあれば、
ハンディの金属探知機まであるときもあるし、
ボディチェックまであるときもある。
モスクやヒンドゥー寺院に入るのに厳しい
セキュリティーチェックがあるのはちょっと残念だけど
是非とも手を抜かないで欲しいという複雑な心境。


クリシュナの生まれたという小高い丘は
涼やかな風が吹きすさぶ、やはり何か不思議な雰囲気を
もった場所だった。
寺院内をぐるりと歩き、壁に掛けられた
クリシュナにまつわる名場面の絵画を眺め、
土産物屋を物色した。


その後、歩いてヤムナ川方面へ向かった。
昨日リクシャで走った通りは
今日も地元人たちで
のどかながらも賑わいを見せていた。
途中道端でインド的ファーストフードを食べた。


写真は凧職人が凧を作っているところ。


川が近くなると、
通りからいくつも小さな小道が出ていて
その小道を歩き切ると川へ出るんであった。
川へ出ると遊覧ボートのこぎ手が
値段交渉を始めてくる、
船に乗りたかったけど、
値段交渉が鬱陶しくてやめた。
川の向こう岸は
下町風のこちらと打って変わって
黄緑っぽい緑に溢れた
みずみずしい林のようになっていて
木々の間から寺院の尖塔が見え、
そこにそれがあることを示していた。


また参道のような両脇に店の立ち並ぶ
こじんまりながらものどかな活気のある通りに戻り、
また小道に入ると、
小道脇の祠からサドゥー(修行僧)のようなのに
声を掛けられた。
そして祠でお祈りをしたら
彼が甘いお菓子をくれてこう言った。
これを食べて「はっはっは!」と笑え、と。
口に砂糖菓子を放り込み、「はっはっは!」と言うと
不思議とほんとに笑えてきた。


その後、サドゥーとメインガートに出て
ガートのほとりに建つ寺院に御参りをし
サドゥーがボートに乗るかと聞くので
一緒にボートに乗り、
ちょうど夕方のお祈りの時刻で
川から先の寺院や参拝客を眺めた。
向こう岸の寺院に行ってみるかとサドゥーに聞かれたけど
もう暗くなり始めていたので
行きたかったけど断った。


また岸に戻り、
ほんとにこの町は小さな寺院がそこいら中にあって
サドゥーの案内で御参りして
暗くなってきたので、リキシャを拾って
アシュラムに戻った。


アシュラムで夕刻のお祈りに参加したかったのだけど
帰るのが遅くて
お堂はもう鍵がかかっていた。
明日の朝は6時半からお祈りだそう。