ポンディチェリー〜マハバリプーラム(1)

1月末に、祝日を利用して二泊三日の小旅行に行ってきました。
行き先は、バンガロールからバスで7、8時間の場所に位置するポンディチェリー。
バスは前の週に、民間の会社が運行している長距離バスをオンラインで予約した。
ちゃんと座席の位置も選択できる。
寝台バスのシートがまだ余っていたので、それにした。片道420ルピー、800円弱。
寝台でなければ、300ルピーくらいだったと思う。
インドで旅行していると気づかされるのが、バスがかなり発達していることだ。
列車と違って、目的地に直接向かうため、所要時間の節約になるのと、
運行本数が多いため、乗客のニーズに適っているためだろう。
運賃は、ちょっといい長距離バス(と言っても期待するほど良くはない)なら
電車賃を上回るとも聞く。
今回の場合は、バンガロールからポンディチェリーに直行する列車がないため、
比較の余地はなかった。


バスは、バンガロール市内に数ヶ所あるバス運行会社の支店で乗客を拾ってから、
目的地へ向かう。
私が今回利用したのは、Sharma Transportsという
インド中の主要都市と観光地に拠点を持つバス会社で
何度か利用したことがあるけど、そんなに悪い印象はない。
バスが、最寄の支店に夜10時半前に来るので、夕飯を済ませた後、
荷物を詰め込んだリュックを背負って、夜10時頃に支店に到着した。

路上販売しているミネラルウォーターを買って、しばし待機。


予定時刻より10分ばかり遅れてバスが来た。
そのバスは、座席を折りたたんでベッドにするタイプではなく、
最初からベッドが据え付けられているタイプのバスだった。
すでに他の乗車ポイントから乗ってきた人たちが、することもないので眠ろうとしていた。
自分の座席番号を確認して荷物を降ろし、靴を脱いでついでにソックスも脱いで
座っていると、添乗員がチケットのチェックに来た。
しばらくすると旅立ちの軽い緊張から早くも開放されて眠くなってきたので、すぐに寝た。


バスが停車して人が降りる音が聞こえて目が覚めると、日本で言うところの
パーキングエリアだった。
だだっ広いわりに閑散とした薄暗い定食屋のようなのがあって、
キオスクみたいなのがあって、そして公衆トイレがあるんであった。
靴下と靴をはいて、薄暗い照明で照らされた薄暗い車内を歩いて、前の扉から出る。
見ると、他にも長距離バスが数台、停車しているので、自分のバスの位置と車のナンバーを
確認して、レストランを冷やかして、トイレに向かった。
トイレは2ルピーを支払う有料制にもかかわらず、全然きれいじゃなかった。
インドではよくあることだけども。


キオスクに並ぶ商品を見渡しても、見慣れた菓子類なんかばかりで
購買意欲をそそられることもなくぼんやり突っ立っていると、
私の乗ってきたバスがエンジンをかけたので、慌てて戻った。そしてまた寝た。


次に停車してまた人が降りる気配がしたので目を覚ますと、
すでに終点のポンディチェリーだった。早い。
ポンディチェリーが思いの外近かったのと、
熟睡している間に旅先に着いていたお手軽感はちょっとした驚きだった。


余談になるが、インドで寝台バスに乗るのはこれが3度目で、
1度目はたしか20時間くらい乗って移動したんだけども、
シングルベッドより狭いくらいのシートを、どういうわけか2人で寝なければならず、
私はサリーを着た見ず知らずのインド人女性と一緒に寝た。
2度目は、ゴアからハンピに向かったときで、このときは道が極悪で
バスがすごく縦揺れしたため、これまで寝台バスにはあまりいい印象がなかった。
でも今回のバスは、近代化されたのか、思いの外乗り心地が良かったので
またこれくらいの中距離移動をするときは、寝台バスで夜間移動しようと思った。


着いたのは朝6時台だった。
バスから降り立つ観光客に群がるオートドライバーたち。
彼らを制することからインドの格安旅行は始まるんだけども、
非常に鬱陶しい存在ではあるのだけども、今回久々に見て、ちょっと懐かしさすら感じた。
私が9年前初めてインドに来た頃と変わらない方法で相変わらず彼らは商売していた。
多少変わったと言えば、サイクルリクシャ(自転車版の馬車という感じ)の数が減り、
その代わりオート三輪を運転するオートドライバーが増えたことくらいか。
10年後もこうやって商売してるんだろうなと、インドの変わらない部分を想像してみた。


今回、事前に以前来たときに気に入ったロッジに予約をしておいたので、
とりあえずそこに向かうことにした。
オートドライバーに目的地を告げるとメーターでは走らないと言う。
料金交渉しようとすると、何が何でも70ルピー(135円くらい)から下げなかったので、
その料金で行くことに。早速オートに乗り込み、そのロッジに行ってもらった。


あーこの通り、懐かしいなあ、あ、このコーヒー屋さん美味しかったなあ、と
ゆっくりと流れ行く懐かしい風景に顔をほころばせていると、
じきに目的地のロッジに到着した。70ルピーのわりに近かった。


ロッジは、外観がどうも記憶と合致しなかったけど、
表玄関口から中に入るとやっぱりあのロッジだった。
懐かしさと、当時のいい印象が込み上げて来たところで、
受付のおっさんに「予約していた者ですが。」と言うと
意外な返事が返ってきた。
おっさんは、満室だ、と躊躇せず言った。
そんなはずはないと思い、「え、○月○日に、2泊の予定で予約したんだけど。」と
詳細を聞かせても、満席で空きがないの一点張りだった。
そして「たしかに予約の電話は受けたが、うちは予約は一切受け付けないんだ。」と
論理が破綻したことを言うので、
「そのとき、どうして言ってくれなかったのか?」と不信感をおっさんにぶつけてみたが、
おっさんは遠くを見る目をして黙って首を振るばかりになってしまい、
ようやく、あーここはインドだからだ、と諦めのつく最も妥当な理由を自分で見つけ、
おっさんに背を向けてロッジを出た。

(2)に続く…。